品質管理をあるべき姿に

中国で働くあるアメリカ人マネージャーの品質向上に関する視点

私たちの工場は米国鉄骨構造物学会の認定を受け、ISO9001品質管理システムの認証を取得しました。工場の壁には、数多くのさまざまな品質認定や中国国内の鉄骨協会の楯、エンジニアリング組織の会員証などが立てかけてあります。また総括的な操作マニュアルや非常に細かな手順書もあります。内部品質監視のチームとアメリカ溶接協会(AWS)の製造工程を監督する第三者機関もあります。

ひょっとしたら、これで充分だと考えることもできるかも知れませんが、そうは行かないのです。私は、品質査察のお客様とともに工場を何千回も歩きます。製造品質、ドリル穴の位置、スカラップの異常、仮付け溶接、取り付け、溶接方法などを検査します。それから、溶接の点検口、三重にわたる図面のチェック、亜鉛めっきの検分、ノート取り、考えのすり合わせ、当社の製造仕様に至るまでさまざまなことをチェックします。一日の終わりには、製品を出荷するために必要な解決すべき品質問題に関するパンチリストが出来上がります。この毎日のパンチリストが品質を大きく向上させるものなのです。なければ、品質の欠如を意味します。

実際の品質管理には認証もお墨付きも形ばかりの合意も関係ありません。関係するのは人です。中国では従業員をまとめ、賃金や労働時間、労働条件などの重要な課題について闘う強力な労働組合はありません。労働規則を交渉したり、職場の不満を拾い上げたり、採用・解雇に関する規則を説明したりする仲介者は存在しません。それから従業員の便益や職場の安全、雇用条件の維持・向上を促すポリシーなどを明示した小冊子もありません。特に民間部門におけるこのような組織上の欠如のため、低賃金やモラールの低下が広い部門にわたり見られます。

 多くの調達マネージャーが、労働を通じてなんらかの価値を加えるのではなく、既にこの質と価値が外部調達した商品に存在する、と認識しているのは明らかです。つまりここで労働の成果が誤って理解されているのです。組立鋼材は労働の産物であり、その完成品質は、その製品と販売に組み込まれた人間の社会関係を反映するものなのです。鋼材は非常にシンプルで理解が容易に見えますが、鋼材そのものとそれを作った人間の間には社会関係があるのです。

私は中国で働くアメリカ人として、一連の手順の実施や品質管理、定刻の出荷といった課題に直面しています。従業員の協力なしには、どれひとつとして為すことはできません。外国人マネージャーはアウトサイダーであるため、厳しい試練にさらされますが、この違いこそが変化の機会を作り出すのです。従業員たちが職業上の健康や福利、いわゆる幸福な生活といったことに関心をもつのはまだまだ先の話です。彼らは西洋の労働者ほどの賃金は得ていませんが、私たちは労働条件の改善や経済的困難の克服に努力しています。品質向上の戦略は、若者がモノを手に入れ、家を建て、家族を養い、そして高い教育を求めるという夢を共有する機会を作り出すところから始まるのです。